経済研ニュース－Ｎｏ．７

“我々は地球に何をしているのか”

　平成８年度事業の一環として、２１世紀産業問題研究会（委員長宮川公男麗澤大学教授）を設けて「求められる２１世紀型企業像とは何か」の議論に係わる調査研究を進めています。２１世紀に向け、産業構造の変革と産業の創出が叫ぱれているなか、企業の経営行動に今後、何が求められ続けるでありましょうか。２１世紀の産業社会が必然的に、新しい産業の成長と資源・環境保全の共生した社会の構築を目指す時、主に、環境問題に対する企業の役割とその貢献はこれからの企業の存立条件と関連して極めて大きいと思います。今後の企業の存立条件に、世界基準の経営と基盤技術の確立志向が指摘されています。廃棄物のリサイクルを含めた環境保護への取り組みへの有無は企業の世界基準の経営体質の流れに沿えるか問われる問題であります。組織の国際環境基準として共通ルールを定めたＩＳＯ１４０００への対応も早、動き始めています。

　当部はこうした動きを踏まえつつ、日本機械企業の環境問題における対応と行動についての把握に努めようとしています。ことに、その経営理念と環境問題に取り組む姿勢、また、商品開発からリサイクルヘの取り組み問題、環境産業の形成問題などについてアンケート調査やヒヤリングを進めています。

　欧米トップ企業の経営理念の背景にある　“我々は地球に何をしているのか”　と言う意識の拡大は強く、学ぷ心要がありましよう。

統計解説　（その１）　－ＥＵ諸国の統計　　－「機械工業図書館」　の所蔵資料を活用する－

　ＥＣ市場統合により誕生したＥＵ（欧州連合）加盟１５カ国は、生産続計に関するデータを抜うＰＲＯＤＣＯＭ（ＰｒｏｄｕｃｔｓｏｆｔｈｅＥｕｒｏｐｉａｎＣｏｍｉｕｎｉｔｙの略）と域内取引に関する貿易統計データを扱うＩＮＴＲＳＳＴＡＴ（Ｉｎｔｒａ－ＣｏｍｍｕｎｉｔｙＴｒａｄｅＳｔａｔｉｓｔｉ－ｃｓの略）の２つの統計システムに移行することになっている。
　この統計システムは、すでに統計整備の進んでいる国では新しいシステム（分類の整備）ヘの切り替えを、統計整備の遅れている国は、指示されたシステムによって新た統計調査を開始し、報告することとなっている。当然ながら従来のＥＣの統計も対象となっている。

ＰＲＯＤＣＯＭの概要
　当図書館では、ＥＵの統計以外にも、ＥＵ加盟国の中でも、英、独、仏、伊、ベルギー、オランダ、オーストリア、スウェーデンの統計を所蔵している。従来生産統計は、各国独自の分類で作られてきている。このため、こうした新分類システムヘの移行により、分類形態が大幅に変わるドイツ、英国などで発行が大幅に遅れている。
　ＥＵ統合以前でも、ＥＣの統一した生産統計作成の試みがなされたが、いずれも失敗してきた。今回の市場統合に伴い工業生産に関するハーモナイズされた包括的で、現実的な統計整備が心要になり、１９９０年にこのための“規則”と“統一的なリスト”（ＮＡＣＥ）が作成された。
　このＮＡＣＥは、加盟各国の中央統計局、産業界とＥＵ各統計部局の協力により作成されており、域内貿易統計と比較可能で、域外諸国との貿易においても利用可能なものとなっている。

ＮＡＣＥとは
　ＮＡＣＥは、ＥＵの経済活動に関する一般的な産業分類（Ｇｅｎｅｒａｌ　Ｉｎｄｕｓｔｒｉａｌ　Ｃｌａｓｉｆｉｃａｔｉｏｎ　ｏｆ　Ｅｃｏｎｏｍｉｃ　Ａｃｔｉｖｉｔｙ　ｏｆ　Ｅｕｒｏｐｉａｎ　Ｃｏｍｍｕｎｉｔｙ）である。
　１９７０年に運用が開始されたが、ＩＳＩＣ（国際標準産業分類）分類と整合性が無いという重大な欠陥を抱えていたため、改訂版であるＮＡＣＥ（Ｒｅｖ．１）が運用されこの問題は解決された。ＩＳｌＣとの対応は、ＮＡＣＥの分類を集約することにより可能となっている。ＮＡＣＥ（Ｒｅｖ．１）は、ＥＵＲＯＳＴＡＴへの報告だけでなく、各国のデータ収集およびデータ処理についても運用される。
　また、報告される統計データは膨大な量にとなるため、ＥＵＲＯＳＴＡＴではＣＤ－ＲＯＭ、オンラインによる提供を行うことになっている。日本では総務庁において端末機によるデータの検索が可能となっている。

ＩＮＴＲＡＳＴＡＴの概要
　ＩＮＴＲＡＳＴＡＴは、国境での通関手続きが廃止されてことに伴う、新たな域内貿易の実態を把握するための統計システムである。このシステムでは貿易業者など付加価値税の申告義務者（一部納税義務のない公共団体なども含まれる）の報告に基づいて集計される。

新しい貿易に関する統計の体系
　域外貿易に関しては、従来通りＨＳ分類によるが、域内貿易に関してはＩＮＴＲＡＳＴＡＴによる。ＥＵ全体の貿易に関する統計は、この２つの異なった統計システムを合算したデータから構成されるため、ＨＳ分類とＩＮＴＲＡＳＴＡＴ分類の整合性が問題となる。
　ＥＵ全体のデータは、

　域外貿易：従来通りＨＳ分類により作成
　域内貿易：ＩＮＴＲＡＳＴＡＴにより作成
　ＥＵ全体：①＋②

　このため、英国の貿易統計は現在、域外貿易統計と域内貿易統計の２冊が発行される。

当館所蔵のＥＵの統計
　*　Ｂａｌａｎｃｅ　ｏｆ　Ｐａｙｍｅｎｔｓ．（季刊）
　*　Ｅｕｒｏｓｔａｔｉｓｔｉｃｓ：ｄａｔａ　ｆｏｒ　ｓｈｏｒｔ　ｔｅｒｍ　ｅｃｏｎｏｍｉｃ　ａｎａｌｙｓｉｓ．（年１１回）
　*　Ｅｘｔｅｒｎａｌ　ａｎｄ　ｉｎｔｒａ－ｅｕｒｏｐｅａｎ　ｔｒａｄｅ．（月刊）
　*　Ｉｎｄｕｓｔｒｉａｌ　ｔｒｅｎｄｓ：ｍｏｎｔｈｌｙ　ｓｔａｔｉｓｔｉｃｓ．（月刊）

開催状況

　つぎのとおり、当経済研究所主催の講演会を開催いたしました。

＜機械情報産業講演会＞
日　時　：　２月２０日（木）　　１３：００～１７：００
テーマ　：　「機械情報産業の２１世紀への挑戦」

　１）　「転換を迫られる２０世紀型産業」

		経済研究所　客員研究員・東京大学名誉教授
		明治学院大学　国際学部　教授　　　　　　　　竹内　　啓

　２）　「ベンチャービジネスへの挑戦」

		アサカ理研工業（株）　社長　　　　　　　　　山田　慶太

　３）　「変わる機械情報産業」

		当経済研究所　調査研究部　研究主幹　　　　　中尾　　久

＜その他の催物＞
１１月２７日　　第２６８回　ＳＴＥＰ研究会　　「産業空洞化の現状と克服について」
１２月２０日　　第２６９回　ＳＴＥＰ研究会　　「デュアル・ユース・ハイテク分野における対中投資と政府の役割　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－対中関係における米国の産官連携との」
　１月　９日　　第１回　フォーラム　　　　　　「中小企業における製品開発と技術移転」
　１月２１日　　第２７０回　ＳＴＥＰ研究会　　「平成９年の日本経済」