「中堅中小企業のデジタル化によるモノづくり基盤の強化」

報告書No.H19-5 平成20年3月発行

【主要目次】

第1章 本調査研究の概要

第2章 中堅中小企業におけるモノづくりのデジタル化の現状と課題

第3章 モノづくり現場におけるデジタル化の取り組み事例と事例分析

第4章 中堅中小企業のデジタル化によるモノづくり競争力強化に向けて

【概要】 

 
 現在、わが国のモノづくり企業はグローバル競争の激化、製品ライフサイクルの短期化に曝され、また企業のモノづくりの現場も労働人口の減少や雇用形態の多様化などの構造変化に曝されている。こうした状況下で大企業のみならず中堅中小企業においても、モノづくり基盤の強化に向けた対策を講じている。その手段の一つとして、モノづくりの現場では「デジタル技術」の活用が注目され始めている。そこで当経済研究所では、モノづくり現場においてデジタル技術を活用し、QCDの向上を成し遂げ、構造変化への対応に取り組むモノづくり企業に対して実態調査を行なった。
 
 本調査研究の結果、中堅中小企業でも競争力の強化に向けた対策として、モノづくり現場のデジタル化に取り組む企業が多くあり、また取り組みの結果としてQCDの向上、加えて技能者の習熟期間の短縮などといった成果が見られることがわかった。しかし、中堅中小企業に限らずモノづくり現場のデジタル化には、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンでの分断、各チェーンの中での分野ごとの分断、分野ごとの工程内での作業ごとの分断という具合に情報の島化≠ニいう問題があること、中堅中小企業にとっては導入コストの採算性(投資採算性)の確保、など幾つかの課題があることもわかった。

 しかし、経営資源の限られた中堅中小企業では短期間でモノづくり現場すべてにデジタル技術を導入することは困難である。したがって、先進的な取り組みを行っている企業でも、できることからやっていく≠フであり、部分最適を積み重ねて全体最適を模索している。そのため、中長期にわたる計画と、それを実行する経営者の自社のモノづくり現場の競争力強化はデジタル化で行う≠ニいう強い信念が重要であるといえる。

 本調査研究では、従来から調査研究が進み大企業のみならず中堅中小企業でも導入が進められているエンジニアリングチェーンのデジタル化だけでなく、サプライチェーンのデジタル化、特にモノづくり現場のデジタル化に対する有効性と企業サイドのニーズが明らかになった。したがって、中堅中小企業のモノづくり現場の強化や生産性向上につながるような、モノづくり現場のデジタル化に関わる行政の支援を強く期待したい。


この事業は競輪の補助金を受けて実施しております。