V.概要
機械工業を始め製造業における研究開発投資効率の低下と、それによる国際競争力の低下が懸念されている。本調査研究は、機械工業における研究開発効率の低下について、その事実確認を行うとともに、事実であった場合の対策について検討を行うために実施した。具体的には、まず既往の議論と分析手法に関する資料文献を収集、整理、分析し、その傍ら、機械工業における研究開発投資と財務指標の関係を把握するため、日本政策投資銀行設備投資研究所の協力を得て、機械工業21業種の財務統計データを分析した。また、これと併行して、主要メーカーにおける研究開発実態につきヒアリング調査を実施した。その結果、@研究開発投資の効率低下に関する議論は90年代の特殊状況を踏まえていない、A効率低下があったとしても限られた業種で起きたことである、B研究開発投資が収益を圧迫しているのではなく、収益悪化が研究開発投資を圧迫しており因果関係が逆である、C機械工業の「創造業」への進化が続いている等の事実を確認できた。これら調査研究結果を踏まえ、@創造業への進化をいっそう促進するために研究開発への十分な投資が必要である、Aそのために研究開発への再投資の仕組みを強化すべきであり、「研究開発ファイナンス型ビジネスモデル」の構築が重要である、B政府においては、企業内ファイナンスの困難な基礎研究開発を支援すべきである等を提言として盛り込んだ内容になっている。
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