V.概要
現在の日本企業の国際競争力の強化や再生には、新たな組織間関係の構築と組織間学習の促進という視点に立った技術イノベーションが必要になっている。具体的には組織外部の資源を獲得し、有効活用して新たなイノベーションを創造していく組織のあり方が問われているのである。その現状と今まで足りなかった視点とは何か、この点を明らかにすることが本報告書の目的である。調査対象としては、近年、独自のスタンスで変革を成し遂げている欧州、とりわけドイツ企業に注目している。ドイツ企業は伝統的な強みを活かしつつ、新たな資源を積極的に取り入れながら変革を進めており、さらにアメリカ型の変革とは異なった様相を示している点からも、日本企業にとって学ぶべき点が少なからず存在すると考えられるからである。具体的には、日本とドイツの工作機械産業、自動車産業、化学産業を対象とし、国内外の関係諸機関に対するヒアリング調査を行っている。調査の結果から、@継続的なイノベーションへの挑戦の必要性、
A戦略的パースペクティブと戦略の再検討(総合戦略の見直し)、B新しい組織間関係の構築と共同開発の促進(社会的な研究者のネットワーク構築)、C産学連携の促進(「学」と「産」を媒介する組織の構築)、D組織間学習の促進、E組織間学習を促進する組織間関係のマネジメント(組織間学習と組織内学習との連動)の工夫、といった示唆が得られた。
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